
- 業態を問わず売場の見直しが今、急ピッチで進んでいる。ユーザーの自転車に対する見方やニーズがこれまでと大きく変わったのが最も大きな理由である。
- 「環境」や「エコ」を追い風に自転車そのものの注目度が高まったこともある。さらにスポーツや健康志向を具現化するツールとして、また自分らしいライフスタイルの実現に自転車が不可欠のアイテムとしてクローズ・アップされている。品質の劣る、安いだけの輸入自転車にユーザーが飽き足りなくなったこともあるだろう。
- いずれにせよマーケットが変われば売場も自ずと変わらざるを得ない。改めて商圏の現状分析やターゲットの見直しを行い、MD(マーチャンダイジング=品揃え)の再構築や、集客の仕掛けといった店舗マーケティングを進めていかなければならないわけだ。
- その中で専門店経営に必要なことは、CS(顧客満足度)の徹底的な追求と、粗利35%前後(店舗規模や立地、品揃えによって異なる)の確保を前提とした売上目標の達成である。この2つを実現するために、もう一度現在の商圏を見直し、ターゲットを明確にした売場=品揃えをする必要がある。
- 今、専門店に求められるのは、顧客一人ひとりの顔が見える「One to One」マーケティングによる量販店との差別化であり、新たな可能性を持つ新規ユーザーを、どう自店に誘引し囲い込みできるかということに他ならない。ちなみに顧客とは、過去に購入した履歴があり、かつ再来店してくれる顧客であるが、別の見方をすれば「売場に共感してくれる顧客」のことである。

- どんな店舗を実現したいのか、という明確な目標を常に持ちたいものだ。それを意識して努力しているショップでももう一度「自店の強みは何か」を確認し、かつ計画に基づいた店舗運営ができているかどうかという判断基準を持つことが必要だ。ここでいう目標とは「年収を800万円にしたい」とか、「3年後に新店を出したい」というようなことである。以下に必要なチェックポイントを列記して見る。
- ――というようなことである。
ターゲットを絞り込むのは店コンセプトとも、またMDとも連動する重要な作業である。先ずはどの層(性別、年齢層、生活スタイルなど)にどんな商材を提案するかで、顧客の塊を作成する。いわゆる「セグメント」である。経営者の意向だけでなくライバル店の品揃えや価格帯を比較し、先方の弱い部分や不足している部分も研究すればなお良い。そして来店者の購買目的に合わせた商品カテゴリーを、最適な場所に配置(ゾーニング)することが肝要になる。
- 売上目標は現在の数値をベースに、商圏における自店のシェアをどのあたりに設定するかで変わってくる。逆に、目標数値がすでにあるなら商圏内シェアをどれだけにするか、もしくは商圏をどこまで広げられるかという検討が必要だ。
- 1つの目安としては、修理を含んだ自転車購入費が1所帯当り仮に7000~8000円前後と想定すれば、マーケットサイズがほぼつかめよう。その中で自店の売上目標を具体的に定め、目標達成の戦略を立てるのが良いだろう。

- 簡単に言えば、マーケティングとは「商品とニーズをマッチングさせる作業」のこと。顧客に「買いたい」と思わせ、来店して購入してもらうことだ。ただし、店舗マーケティングは「何のために」という目的意識をしっかり持って実践しなければ、なかなか実績が伴わずに終わるケースが多い。店舗経営を“家業”ではなく“事業”として推進する経営感覚が必要だ。
- 別の言い方をすれば、店舗のマーケティングは「誰に」、「何を」、「どのように」売っていくのかということを、市場や環境の変化に応じて確立することである。つまり、顧客のニーズをどう取り込むかを決め、それを実現する仕組みをつくる作業だ。そのためには自店の商圏特性(地域性)や、ユーザーの消費志向(市場性)を知る必要がある。

- その上で消費者との信頼関係が構築できれば申し分ない。顧客との関係づくりで判りやすい例は、自店の“ナンバー1”をつくることである。「地域で一番親切な店」とか「一番きれいな店」、「一番早く新製品が並ぶ店」というような評価を顧客に持ってもらうことだ。顧客とのコミュニケーションを欠かさず。共感してもらえる売場ができるはずだ。
- それにはお客様の声に耳を傾け「顧客に育ててもらう店舗」という謙虚さも必要だ。
顧客の商品購入基準は次の要素である。

- 中小規模の店舗が量販店、大型店に伍して勝ち残るには具体的な店舗ビジョンが必要だ。しかし、そのビジョンを実現するためにはどうしたら良いのか?例えば売上を増やしたい。そのためには何をどれだけ売り、経費がいくらといった数字の管理が経営のベースになる。その上で店在庫は現状で良いのか、商品構成はどうするのか、また売場のレイアウトは、というような売場づくりのテーマが決まる。
- 客数・単価・売上の3要素を常に把握し、「売上分析」を週、月、季節、年度でみていくことも大事なことである。これで自店の傾向を目に見える形で理解し、過去のデータと比較して将来の計画をより実現性のあるものにしていく。「計数」とは店舗の現状を数値化したものと理解すれば判りやすい。「売上高」と「粗利」から確認してみよう。
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- 粗利益は「売上総利益」とも言い、利益を示す代表的な指標である。そして「売上原価率」が上がれば「粗利益率」は下がり、売上原価率が下がれば粗利益率が上がる。2万円の商品を1万5000円で仕入れたのであれば粗利益は5000円、粗利益率は25%である。修理のように価格の大半が労働対価の場合は、粗利益率はさらに大きくなる。また売上高は誰(何人)に幾らで売ったかで算出される。
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- 売上高を上げるには客数を増やすか、客単価を上げればよい。何れの方法が可能かは売場によっても異なるが、ここで必要なことは自店の客層を種別に分析し、データを「仕掛け」に反映させることである。種別とは「男女別」「年代別」「顧客のエリア」「前年・前月の同曜日と週単位比較」などである。売上高を効率面から見てみよう。これは店舗スペースが基本となる。
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- 「売場効率」は、3.3m2当りの売上高(坪売上)をアップさせることによって高められる。売場効率が一定ならば、売場面積を広げれば売上は増える。そして坪売上を見極めることで商品部門ごとに効率を算出し、売場の効率性を明確にできる。これが商品レイアウトの基礎資料ともなってくる。

- 15~20坪程度の標準店舗の場合、総花的な品揃えはスペース的にも無理であるし規模の効率も発揮しにくい。それでも、ユーザーにとって魅力的な品揃えなら陳列商品が少なめでも「豊富な品揃え」というイメージを持ってもらえることができる。それが専門店たる由縁でもあるのだが。そのためには売場コンセプトとターゲットを明確にし、少しでも商圏を広げる努力をしたい。「おしゃれ自転車」とか「大人のサイクリング車」というような“キーワード”を発信し、定着させられれば申し分ない。それが店舗の代名詞ともなるからだ。
- 売場の構成に関しては「商品の3分類」の確認も必要となる。何を売り、どの商品で利益を計上するか、言うなれば商品の役割分担であり、利益商材の見極めと確保である。
- 『売れ筋商品』はニーズが高く売りやすい商品。当然、目的買いや指名買いも多いので目につきやすい場所を占める。『売り筋商品』は売る側の姿勢を明確にした商品である。「店の特徴を表す商品」であり「そこでしか買えない商品」、オーナーの「お勧め商品」もこの範疇に含まれる。利益率が高く潜在ニーズも掘り起こせる商材であるが、商品説明が必要になる。PB(プライベートブランド)がこのジャンルに該当し、売れ筋と組み合わせて販売するケースが多い。さらに『見せ筋商品』は、売ることよりも店のイメージアップなどに使われる商材だ。

- 商品構成が決まったら、顧客の購買意欲を誘発する商品の見せ方を工夫してみよう。念頭に置きたいのは、「買上げ率」(商品を購入する度合)をいかに高めることができるかである。
- 商品販売に“満点経営”はない。ニーズが変われば売場も当然変わるからだ。経営者は常に仮説を立て、実証していかなければならない。そうすることによって顧客を育て(囲い込みができ)、また顧客にも育てられる売場となるからだ。